認知症対策としての任意後見、家族信託①/
任意後見と銀行の信託商品――「家族信託が必須」とは限らない
「認知症になると銀行口座が凍結される」という話をよく見かけます。ただ、正確には、認知症と診断された瞬間に自動的に凍結されるわけではなく、金融機関が判断能力の著しい低下を認識したときに取引が制限されるというのが実態です。家族が窓口で「親が認知症です」と伝えた際に凍結されるケースも少なくありません。
■ 銀行の信託商品で対応できる場合もある
他事務所のコラムでは「認知症対策=家族信託」と結論づけるものが多く見られます。しかし実際には、財産がほとんど預貯金のみで不動産を持っていない方の場合、銀行の信託型サービスだけで十分対応できることもあります。
たとえば三菱UFJ信託銀行の「つかえて安心」(代理出金機能付信託)は、本人と代理人が共同で管理する口座の仕組みです。本人の判断能力が低下した後も、3親等内の親族・弁護士・司法書士の中から登録した代理人が引き続き資金を管理できます。家族信託のような信託契約書の作成や公証役場の手続きは不要です。
この地域で馴染みの深いりそな銀行にも「頼れる安心信託」という商品があり、認知症などで判断能力が低下した際にあらかじめ指定した代理人が医療費・介護費を引き出せる仕組みです(対象は金銭のみ)。いずれも銀行窓口で手続きが完結する手軽さが特徴です。
また全国銀行協会は2020年3月、「戸籍など家族関係を証明する書類と介護施設・医療機関の請求書など使いみちが確認できる書類が揃えば、認知症で意思確認ができない場合でも窓口での払い出しに応じる場合がある」との指針を示しています。
ただし銀行の信託商品には限界もあります。
- 対応できるのは預貯金のみ(不動産や株式には効果がない)
- 本人が亡くなると代理権は消滅するため、死後の財産承継は別途対応が必要
不動産をお持ちの方や相続対策まで視野に入れたい方には、家族信託や任意後見が引き続き有力な選択肢となります。
■ 任意後見制度とは
任意後見制度は、元気なうちに自分で信頼できる人(任意後見人)を選び、将来判断能力が低下した際の財産管理や生活支援を公正証書で契約しておく制度です。
任意後見の最大の特徴は、介護施設の入居手続きや病院の入退院手続きなど「身上監護」ができる点です。家族信託にはこの機能がありません。
一方で、制度が開始されると家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督下に置かれるため、財産の積極的な運用や相続対策には制約が生じます。任意後見監督人への報酬(管理財産5,000万円以下の場合、月額2万円程度が目安)も継続的にかかります。
次回のコラムでは、家族信託の特徴と、任意後見との「併用」が活きる具体的な事例をご紹介します。
NBC司法書士事務所では、任意後見・家族信託に関する無料相談を承っております。お気軽にご連絡ください。
