2026年の成年後見制度改正:26年ぶりの抜本的見直し
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1. 改正のポイント
2026年4月3日、政府は成年後見制度の抜本的な見直しを含む民法改正案を閣議決定しました。この改正は2000年の制度開始以来、約26年ぶりの大改正です。改正案は2026年通常国会に提出され、成立すれば公布から2年6ヶ月以内に施行される予定です。
2. 現行制度の主な課題
制度開始から25年が経過し、いくつかの課題が指摘されてきました:
- 一度申し立てると、原則として本人の判断能力が回復しない限り終了できない「終身制」の硬直性
- 本人の意思が十分に尊重されず、画一的な財産保護が優先されやすい制度設計
- 相続手続きなど限定的な目的での利用を予定していても、望まない日常の財産管理まで後見人に委ねることになる使い勝手の悪さ
- 認知症高齢者が約600万人以上と推計される一方で、制度利用者は約24万人程度にとどまっている利用率の低さ
3. 改正の主な内容
(1)制度類型の一本化
現行の「後見」「保佐」「補助」の3類型を廃止し、「補助」に一本化します。判断能力が著しく低下している方には「特定補助」として、不動産の処分などの特定の項目に限定した取消権を付与する仕組みが検討されています。
(2)終身制の廃止
制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合、補助開始の審判を取り消して制度を終了することが可能になります。また、同意権や代理権など、補助人の権限の一部を取り消すといった柔軟な対応も可能になります。
(3)オーダーメード型への転換
本人や家族のニーズに応じて、必要な支援だけを選んで依頼できる仕組みに変わります。これまでの画一的な権限付与から、より個別的で柔軟な対応が可能になります。
(4)補助人の交代が容易に
「補助開始の審判を受けた者の利益のために特に必要があるとき」という柔軟な交代理由が新設されます。本人と補助人との関係性が悪化している場合や、支援方針の調整が困難な場合など、補助人を交代することが容易になります。
(5)本人の意思決定支援の強化
新しい成年後見制度の理念として、「本人の意思尊重」「意思決定支援」「チーム支援」が掲げられます。本人の自己決定権を尊重する方向へと制度が再構築されます。
4. 今後のスケジュール
- 2026年通常国会での改正法案の審議・成立を目指す
- 成立後、公布から2年6ヶ月以内に施行される見込み(2028年夏から秋頃の施行が見込まれている)
- 施行までの間にシステム整備や運用ルールの策定が行われる
5. 制度改正の背景
高齢化の進展に伴い、認知症の方への対応がより重要になってくる一方で、現行制度の利用率が低い状況が続いています。今回の改正は、本人の意思をより尊重しつつ、国民にとって柔軟で利用しやすい仕組みへと制度を再構築することを目指しています。
6. 改正の背景にある実務上の課題
成年後見制度の見直しが検討されるようになった背景には、制度の大きな問題だけでなく、実務における様々な課題の積み重ねがあります。
特に注目される点は、同じ状況でも専門職後見人によって判断が異なる事例が存在することです。例えば、被後見人が後見開始前に自発的に契約していた医療保険について、後見人によっては「本人の財産は本人のためにのみ使うべき」として解約を判断し、別の後見人は「本人が後見開始前に示していた意思を尊重する」として継続を判断するというケースがあります。
どちらの後見人も「本人のため」と考えていますが、本人の価値観をどのように理解し尊重するかについて、専門職後見人の間でも見方が分かれることがあります。このため、本人の意思が家庭裁判所に選任した後見人の主観的判断に大きく左右されるリスクが存在してきました。
7. 今からできる準備
改正施行までの期間に、ご自身やご家族にとって最適な支援について検討しておくことが重要です:
- 判断能力があるうちに、任意後見契約の締結を検討する
- 家族信託の活用で、柔軟な財産管理設計を検討する
- 遺言書の作成など、相続対策を進める
- 家族間で将来設計や希望を共有する
(出典:法務省 民法改正関係資料、厚生労働省 成年後見制度資料 2026年4月)
